この会社

「Rの社長が俺の知り合いでな。今回特別にポスターのデザインを頼まれたんだ。」

 

 

 

「それをお前たちに担当して欲しい。」

 

 

 

「えっ?私たちですか?」

 

 

 

私は藤高さんと顔を見合わせる。

 

 

 

 

「デザインは類家たちの所が担当になるが、そのPRを藤高のところに任せる。」

 

 

 

突然のことで空いた口が塞がらない。

 

 

 

そもそも今まで他のチームと合同で企画を組んだことはない。

 

 

 

そしてクライアントはあの有名なR。

 

 

 

緊張で頭がクラクラしてきた。

 

 

 

 

「Rの社長はこの企画にかなり思い入れがあるんだ。」

 

 

 

「大きな仕事だがやれるか?」

 

 

 

恭太さんは、笑顔でそして真剣に私の目を見据える。
不安はある。

 

 

 

でも、これは会社にとっても、私たちにとっても大きなチャンスであることに間違いは無い。

 

 

 

「はい。やらせていただきます。」

 

 

 

私は力強く答える。

 

 

 

 

恭太さんは、また嬉しそうに笑いながら頷いた。

 

 

 

「藤高の方もやれるか?」

 

 

 

「はい。やらせていただきます。」

 

 

 

こうして私たちは共同でRのクリスマス企画を進めることになった。
「へぇー、まさかクリスマスの企画があのRだったとはね。」

 

 

 

香苗はパスタをフォークにくるくる巻きつけながら口に入れる。

 

 

 

 

「私も驚いた。しかも営業部の人と進めるらしくて。」

 

 

 

「合同なんて中々無いよね。」

 

 

 

「同い年の人なの。」

 

 

 

「まぁ、透も出世したってことよね。」

 

 

 

「いやいや…そんなことないよ全然。」

 

 

 

私はサラダを食べながら肩をすくめてみせる。

 

 

 

 

「でも、こんなチャンスめったにないよ。もう愛する部長蹴落として、昇進しちゃいなさいよ。」

 

 

 

「やめてよ。」

 

 

 

からかう香苗を睨む。

 

 

私が彼のことを好いている、それを知ってるのは香苗だけだ。

 

 

 

しかし部長と私が知り合いであることは殆どの人が知っている。

 

 

 

だからこそ、入社当時はコネを使ったと冷たくされたこともあった。

 

 

しかし、決して恭太さんに頼んだわけではない。

 

 

 

 

「純粋に、この会社に入りたいんです。使えないなら容赦なく落としてください。」

 

 

 

「いいのか透?」

 

 

 

「構いません。よろしくお願いします。」

 

 

 

恭太さん以外には一切知り合いだということを言うことなく、

 

 

 

 

入社試験もみんなと同じように受けた。

 

 

 

その結果合格をもらえて今、この会社で働いている。