溜息

私はお母さんから受け取ったタオルケットを恭太さんにかける。

 

 

 

わざと膝を揺らしたりしてみるものの起きる気配は全くない。

 

 

そっと恭太さんのサラサラとした髪の毛を触ってみる。

 

 

 

頭を撫でると恭太さんは小さく身じろぎをした。

 

 

 

「子どもみたい。」

 

 

 

触れているだけでこんなにも胸が締め付けられる。

 

 

 

恭太さんは私にとても良くしてくれた。

 

 

 

小学校を卒業しても、私が6年生になるまで毎年運動会を見に来てくれて、

 

 

 

私が体調を崩して早退する事になった時、お母さんが忙しくて恭太さんがお母さんの代わりに迎えに来てくれて、

 

 

 

私が困っているときは必ず助けに来てくれた。
だからあの時から私は一度も寂しいなんて思ったことが無い。

 

 

 

恭太さんがいれば何も寂しいことなんてないんだ。

 

 

 

こうして膝を貸すのも、頭を撫でるのも、私だけ。

 

 

 

そう私だけ。

 

 

 

「起きて。もう足痺れちゃったよ。」

 

 

 

「あぁ、悪い。寝てた。」

 

 

 

恭太さんは眠そうに眼を擦りながら大きな欠伸をする。

 

 

 

ジンジンと痺れる膝が何だか名残惜しい。

 

 

 

 

「カレー…食べようか。」

 

 

 

「あぁ、そうしよう。」

 

 

 

私たちはお母さんが用意してくれたカレーを食べた。

 

 

 

 

食べている最中も、恭太さんは何だか眠そうで、綺麗に空になったお皿を洗うとすぐに自分の家に戻って行った。
「優さん、御馳走様でした。美味しかったです。」

 

 

 

「いえいえ、いつでも食べに来てね。」

 

 

 

「ありがとうございます。透も明日寝坊するなよ。」

 

 

 

「しないよ。…おやすみなさい。」

 

 

 

「おやすみ。」

 

 

 

 

バタン。

 

 

とドアが閉まって足音が聞こえなくなるまで玄関に立ち尽くす。

 

 

 

 

「透、明日も会社でしょ?早くお風呂入っちゃいなさい。」

 

 

 

「うん。そうするね。」

 

 

 

温かいお湯に浸かりながら大きなため息をつく。

 

 

 

 

湯船から上がると髪の毛も乾かさずに眠りに落ちた。

 

 

「それでは、その様にプランの変更をお願いいたします。はい、よろしくお願いします。」

 

 

 

私は静かに電話の受話器を切った。

 

 

隣で遠藤君が青ざめた顔で私の顔を窺っている。

 

 

 

 

「類家先輩、どうでしたか?」

 

 

 

「うん。何とかやってくれるみたい。大丈夫よ。」

 

 

 

「はぁー。良かった。本当にすいません俺のせいで。」

 

 

 

「大丈夫、スケジュールの確認は気を付けて。この後の対応はお願いね。」

 

 

 

「はい、本当にありがとうございます。」

 

 

 

遠藤君は急いで自分のデスクに戻るとアタフタしながら書類の作成を再開する。