仕事は楽しい

気付けば君に恋をしていた。

 

 

 

このまま一緒にいられると

 

 

 

そう思ってた。

 

 

 

『透…俺、結婚するんだ。』

 

 

『そう…なんだ。』

 

 

 

 

類家 透

 

 

24歳で初めての失恋をしました。

 

「類家さん、プレゼンの確認お願いします。」

 

 

私は大量に積み重なったファイルの隙間から顔を出す。

 

 

 

「分かった。もうここ置けないから机に置いといて、後で確認する。」

 

 

 

 

 

 

大学を卒業してから、知り合いの働いている印刷会社に就職した。

 

 

 

 

入社してから約2年半。会社で後輩も出来て仕事はさらに忙しくなった。
「仕事増えるなんてついてないわね。」

 

 

そう苦笑いしながら香苗が缶コーヒーを差し出す。

 

 

 

「まぁ、徹夜すればこなせないわけじゃないし…。」

 

 

 

「知ってる。心配したって透はどうせ言う事聞かないからね。」

 

 

 

香苗は私の机に積み重なっているファイルをいくつか取ると自分のデスクに戻って行った。

 

 

 

 

「ちょっと香苗。」

 

 

 

「これ以上はやり過ぎね。今度のランチで手を打つから大人しく寄越しなさい。」

 

 

 

それって、どうなの?

 

 

 

 

そう思ったけどここは大人しく甘えることにする。

 

「類家先輩、本当にお願いしちゃって良いんですか?」

 

 

 

「あぁ、大丈夫。これ終わらせたら私もすぐに帰るから。あんまり待たせると彼女怒って帰っちゃうわよ。」

 

 

 

「冗談キツイですよ。じゃあ…すいません、今日はお先に失礼します。」

 

 

 

最後まで残っていた遠藤君を意地悪く笑顔で見送った。

 

 

 

大きく伸びをしながらチラリと時計を確認すると21時をとっくに回っていた。

 

 

 

 

会社のデスクにはもう私しか残っていなくて、耳鳴りがするほどにガランとしている。

 

 

 

 

「さて。終電までには帰りたいな…。」

 

 

 

そう呟きながらファイルをパラパラと捲ってまたパソコンに向き直る。

 

 

 

仕事は楽しい、始めは全くチンプンカンプンだった仕事のノウハウも少しずつ分かってきた。